昔のこと

水上勉著の本を読んでいたら、私が子供のころの冬の遊びとしていた‘くぐつ‘について記されていた。私の郷里は綾部で、著者は福井若狭であり比較的近いことからやはり風習などが似通っているようで大変懐かしく読んだ。その遊びをしたのは私が小学生だった昭和二十年代の終わり頃のことである。それは雪が降り積もる頃に裏山の麓に仕掛ける野鳥を獲るための罠の一種である。比較的日当たりのよい山裾の灌木の枝を撓ませ、藁縄を結え、地面に固定した横木に細工をして、その後ろを小枝で囲って南天の実や大豆、米などを餌として置き、野鳥が餌を食べようと首を差し込むと仕掛けが外れて首が絞るいささか残忍な仕掛けである。勿論、獲ることがだけが遊びではない。獲れた獲物を御馳走として頂くのである。今はそのような遊びをする子供などどこにもいないと思うが、当時では恐らく各地で行われていたのではなかろうか。何せ食べ物、特には蛋白源は貴重であったから、まさに実益を兼ねた遊びであったのだ。獲物として尤も嬉しかったのがキジバトで、次いでヒヨドリムクドリなどであり、カケスやカシドリなどはよく獲れたが嬉しくをなかった。時にはメジロシジュウカラなどの小鳥が獲れて悲しくなったことも思い出す。また、大敵はノネズミで、餌を食い荒らし、罠にかかった時は始末に困ったものである。あの頃は本当に野山の自然が遊び場で、四季折々いろんな遊びをしてきたことが懐かしい思い出となっている。