お米の値段

お米の買い置きがなくなったので近くの自動販売機に出かけて10kg2,980円のコシヒカリ(栃木県産)の新米を買った。この自動販売機ではこの袋が最高級品であり、最も安価なものは2,380円であった。確かにお米は年々安くなる一方のようである。この量を買えば一人者なので、ほぼ2カ月余り主食には困らないことになる。1日当たりに換算すると50円に満たないお金で主食がまかなえることになる。消費者にとって美味しいお米がより安価に手に入ることは歓迎すべきことではあるが、これでいいのかなとつい考えてしまう。一方で政府は貿易自由化を促進すべくTPP(環太平洋貿易自由化協定)への参加検討を表明したばかりである。参加しなければ自動車や機械などの日本の主要産業が自由化でリードする韓国などに比べて海外市場で不利になっているとして経済団体を中心に参加を支持する声が大きい。しかし、関税撤廃による安価な輸入農水産物の輸入増加による一層の国内農林水産業への悪影響などが懸念される。現在でさえ食料の自給率は41%まで低下しているのに、この上さらなる輸入農水産物の増加は日本の農業の疲弊と農地荒廃に一層の拍車をかける。政府の方針は余りにも唐突であり、どれだけの農業政策があってのことなのか。子供手当暫定税率普天間基地移転などへの対応と同様の方針転換や先送りなどをみると、どうも今政府の政策はちぐはぐであり、議論の経過も見えてこない。食糧の自給は、云うまでもなく今日でもなお国家の安定を築く基盤であり、国土保全においても、フードマイレージにおいても決して軽んじられるべきものではない。日本の加工産業が生産拠点の海外移動により空洞化に追いやられ、さらに農業が関税撤廃で壊滅的打撃を受けることになれば、日本の立国は何によって成り立つのか。自然的要因、社会的諸要因によって国産農産物はコスト高にならざるを得ないが、一方で農業の多面的機能を考慮するとこのような単純なコスト比較で処理できないことは自明である。ただし、農業の多面的機能を価格に直接的に反映することはには無理である。農業の所得保障はともするとバラ播き補助金として批判されてきたが、政策的で緻密な農業所得補償は、丁寧な説明により消費者の理解を得ることができるであろう。日本より自給率の高い先進諸国が厚い農業保護政策を取り入れていることはよく知られている。